副業と一口にいっても、お小遣い程度に稼いでいる方から、ビジネスとして本格的に取り組んでいる方まで、規模や収入額はさまざまです。自分の所得を確定申告でどのように申請すべきなのか、間違って申請した場合にはどうなるのか、気になる方も多いでしょう。
所得区分の違いを正しく理解しておかなければ、本来受けられるはずの控除を受けられず、損をしてしまう恐れがあります。今回の記事では、事業所得と雑所得の違いや判断基準、事業所得がお得な理由を解説します。
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副業を始めたばかりの頃は、副業で得た所得を事業所得として申請すべきなのか、雑所得として扱うのか、判断に迷いやすいものです。まずは、事業所得と雑所得の基本的な違いについて解説します。
事業所得とは、実際の事業から生じる所得のことですが、国税庁の説明では以下のように定義されています。
事業所得とは農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業、その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得をいう(ただし、不動産の貸付けは不動産所得、山林の譲渡による所得は山林所得となり、事業所得には含まれない)
[参照:国税庁『No.1350 事業所得の課税のしくみ』(事業所得)』]所得はその発生形態によって10種類に分けられ、他の所得に当てはまらないものを雑所得と呼びます。なお、国税庁における雑所得の定義は以下のとおりです。
雑所得とは利子所得、不動産所得、事業所得、配当所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得のいずれにも当たらない所得をいう(例:公的年金、非営業用貸金の利子、副業に係る所得など)
[参照: 国税庁『No.1500 雑所得』]副業の場合は事業所得と雑所得のどちらで申告すべきか、判断する明確な基準はありません。しかし、サラリーマンの副業は雑所得と判断されるケースが多いです。
実際、過去には副業の収入を事業所得として申告したものの、結果的に雑所得への修正を求められたケースがありました。事業内容について下記のような点をチェックされ、事業所得としてふさわしいのかを総合的に判断されるのだと考えられます。
税務署から申告内容について指摘されたときに、事業所得として申告した理由を説明できるようにしておきましょう。
副業で得た所得がどちらに該当するのか判別できない場合は、不安を残したまま申告するのではなく、税務署に相談してみるのも一つの方法です。
副業で稼いだお金をできるだけ多く手元に残したいなら、雑所得ではなく事業所得として申告するほうがメリットは大きいでしょう。雑所得の場合は白色申告ですが、事業所得であれば青色申告が可能です。
ここでは、事業所得として申告したほうが良い理由、青色申告の承認により受けられる優遇制度をご紹介します。
青色申告に必要な手続きを行なえば、最高55万円(令和元年以前は最高65万円)の控除を受けられます。令和2年以降については、e-Tax(電子申告)もしくは電子帳簿保存を行なうことで、65万円の青色申告特別控除を受けることが可能です。
ただし、青色申告を行なう場合は正規の簿記の原則で記帳する、賃借対照表や損益計算書を添付するなど、白色申告よりも手続きが複雑になることを覚えておきましょう。
また、確定申告の期間内に申告を終えられるよう、スケジュールを組んでおくことも重要です。期限後に申告となると、控除額が10万円に減額されてしまいます。期限内に確実に申告を済ませて、青色申告特別控除を最大限受けられるようにしておきましょう。
副業に取り組むなかで、ときには赤字が続いてしまう時期もあるかもしれません。利益は出ているものの必要経費の金額が大きく、結果的にマイナスになるケースもあります。
「本業の収入は入っているが、副業分が赤字になってしまった」という場合は、損益通算を行ないましょう。
損益通算を行なうことで、副業で生じた損失分を他の所得から差し引くことが可能です。本業で働いた分の給与所得があるなら、副業のマイナス分を相殺できます。その結果、所得税の負担が少なくなり、本業で源泉徴収されていた分が戻ります。
青色申告をしていれば、事業所得で赤字が出ていたとしても、損失額の繰越しが可能です。この場合、損失額を翌年以後3年間繰り越すことができます。
さらには、前年に引き続き青色申告を行なっている場合、マイナス分を前年に繰り戻して控除することも可能です。前年分の所得税の還付を受けられるため、漏れなく利用できるよう仕組みを理解しておきましょう。
青色申告には複数の優遇制度があると考えると、可能であれば事業所得で申告を済ませたいところです。しかし、誤った所得区分で申告すれば、のちに税務署から指摘や申告修正の指示を受ける場合があります。
「あまり副業に手間をかけていない」「お小遣い程度の収入しか稼いでいない」という場合は、基本的には雑所得として扱われます。所得区分に迷う場合は、税務署や税理士などの専門家に相談するのがおすすめです。
今後、副業の所得を事業所得として申告したいと考えるのであれば、事業所得のほうが雑所得よりも大きなメリットがあることを、しっかりと理解したうえで進めるとよいでしょう。